お母さん、お父さんが子どもを外遊びに誘い出しましょう

外遊び

全国的に子どもの体力低下が指摘されています。公園で遊ぶことも、そんな傾向に歯止めをかけるためのひとつの方法とか。引き続き荻須先生にお話をうかがっていきます。

保護者が子どもを積極的に外遊びに誘い、参加する時代

― 外遊びの時間や生活体験不足が原因と思われる現象を教えてください

文部科学省は毎年、全国の小学生、中学生等を対象に「体力・運動能力調査」を行い、その結果をホームページで公表しています。最近の調査結果と30年前の結果を比べると、体格は今の子ども達の世代の方が大きくなっていますが、基礎的運動能力はほとんどの項目で親の世代を下回っています。

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それに関連して、最近の子どもの中には靴のひもが結べない、スキップができないなど、自分の体を操作する能力がバランスよく身についていないという点も指摘されています。また、転んだ時にうまく手を出せず、顔面を負傷する子ども、ドッチボールをしてもボールを瞬時によけられず、顔面に当たる子どももまれではないと言われています。
「体力・運動能力調査」で示されているように、現代の子どもは、身長、体重などの体格は良くなってきてはいますが、反対に、体力・運動能力は低下しており、身体能力の低下が指摘されています。これは、幼少期からの全身をつかった運動による体の基礎づくりが足りていないことの現れでしょう。

― このような体力低下を食い止めるには、何をしたらよいのでしょうか

40年以上前の日本でしたら、近所には上も下も年齢差がある子どもが大勢いて、年齢が違う子ども同士が集団で遊んでいました。遊び方、体の使い方や遊び仲間での約束事は、そういった日常の遊びの中で自然に身に付けていたんですね。しかし、少子化となった現代は、そのような年齢差がある子どもの遊び仲間の関係はほとんどなくなり、遊び仲間の人数も少数になっています。一例として、ベネッセ教育総合研究所による幼児の生活に関する最近の調査では、普段、保育園や幼稚園以外で遊ぶ相手は、20年前と比べて友達が大きく減少(56%→27%)し、代わりに母親が増加(55%→86%)しているという結果が示されています。わずか20年の間だけで、子どもの生活は、これほど変わってしまっています。

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このような時代背景から見ても、今の子どもたちが体力をつけるためには、まず保護者が意図的に子どもと公園などの屋外に出て、そして、近所に同年齢層の知り合いの子どもがいれば誘い合って、一緒に体を動かす遊びの機会をつくり、普段の生活の中で運動遊びが習慣となるような工夫、心掛けが必要になっているといえるでしょうね。

― 共働きの家庭が多い中、屋外遊びの時間を確保するのもなかなか難しいですよね

無理する必要はありません。たとえば、買い物のついでに10分でも、20分でも、子どもと公園で遊ぶだけでも十分でしょう。そして、公園内で見知らぬ親子が、わが子の好きそうな遊具で遊んでいたら、「こんにちは」「お子さん、何歳ですか?」「仲間に入れてもらってもいいですか?」などと、保護者が積極的に声をかけて、同年齢層の子どもと遊ぶ機会を作ってあげましょう。年長幼児や小学生など、年齢が上の子どもとの遊びも、わが子にとってよい経験になります。また、短時間でも、世話好きの小学生や中学生に遊び相手をしてもらう機会があれば、お互いに貴重な経験になるでしょう。
幼少期から普段の生活の中で、公園等などでの屋外遊びを通して、強く、たくましく生きるための健康、体力をぜひ身に付けて欲しいですね。

どうもありがとうございました。
プロフィール
荻須隆雄先生
荻須隆雄東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。旧厚生省児童家庭局育成課主査(厚生技官)、埼玉県立大学保健医療福祉学部教授等を経て、2013年3月まで玉川大学教育学部教授。博士(学術)。主な著書に『遊び場の安全ハンドブック』(共著 玉川大学出版部 2004、こども環境学会:第1回こども環境論文賞受賞<2006年4月>)、『保育所における事故防止・安全保育』(共著 日本保育協会 2003)など

 

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