なぜ、子どもが10階のベランダから転落?高所平気症をよく知ろう。

高所平気症

皆さんは「高所平気症」という言葉を聞いたことがありますか?マンションの高層階のベランダや階段からの子ども転落事故の一因として、幼少期に公園の遊具などでの外遊びの経験不足が関係しているとのこと。まさに「公園育ち」が大事ということで、母子保健学がご専門の織田先生にお話をうかがってきました。

ベランダからの転落死につながる「高所平気症」

― まず、「高所平気症」について教えていただけますか?

人間なら誰しも多少は持っている「高いところがこわい」という感覚は、実は生まれながらに持っているものではありません。1~4歳くらいの幼少期に外遊びで、例えばすべり台やジャングルジム、ぶらんこなどで遊んだり、ちょっとした高さから飛び降りたりすることで高さの感覚が養われ、「高いところはこわい」という経験が生まれます。 ここ10年以上の間、高層マンションが非常に増えていますが、特に高層階で育つ子どもは日常的に高いところからの風景を見慣れていますし、これに外遊びによる高さ感覚の発達未熟が加わると、「高所平気症」の子どもになる可能性が高まります。 それで何が起こるかというと、子どもが遊び感覚でベランダの柵を平気で乗り越えてしまい、転落する事故につながっています。私の研究では、転落階数で見ていくと、10階以上の場合はほぼ100%死亡します。5階でも約半数が死亡につながっているのが現実です。

高所平気症
― 大きな転落事故はニュースでも見ますが、そうした事例はかなり多いのでしょうか?

全国レベルでの調査がないので、私が個々の事例をもとにデータベースを作り分析していますが、頻度としては毎月1~3件の転落死事故が起きており、転落によるケガは毎月20~30件ありますから、転落しそうなヒヤリ事例も含めると毎月100件以上にのぼるのではないかとみています。 もともと子どもの死亡原因は事故がトップなのですが、こうした転落死もそのひとつです。

子どもは好奇心の塊、日々の成長を侮ってはいけません

― 子どもの死亡原因のトップが事故なのは意外な気もしますね

そうですね、でも子どもの行動心理やその特性を理解すれば決して不思議ではないですよ。よく子どもは遊びの天才だ、好奇心の塊だといいますが、公園のすべり台でも頭から滑ってみたり、大人が想像もしない遊び方をするじゃないですか? つまり子どもは本能的に興味関心を持って常に動き回る存在です。川があれば近くに行ってみたい、細いところがあれば通ってみたい、壁があればその向こうに何があるかが知りたいものです。マンションのベランダの柵は110cmという基準がありますが、これを過信してはいけません。子どもは日々成長していますから、昨日できなかったことでも、今日になればベランダで踏み台を見つけて乗り越えてしまうかも知れません。

高所平気症
― 子どもの成長はうれしい反面、気を付けなければいけない部分もあるわけですね。

あと、子どもは身長のうち、頭の占める割合が大きいのが特徴です。幼児期でも4~5頭身ですから、重心が高いので転びやすいですし、転落もしやすいですね。 よく事故が起きたときに「ちょっと目を離したスキに・・・」という保護者の方の声を聴きますが、例え短時間でも油断してはいけないと思います。

― お母さんも忙しいときもありますから大変ですね

私が調べている転落死の統計では男女比が2:1で男児が多く、発生する時間帯は16~17時が特に多いですね。高層マンションに暮らすことが悪いというつもりは決してありません。でも、高層マンションにふさわしい、適切な暮らし方をすることで「高所平気症」は予防することが可能だと思います。

続いて「高所平気症にならないための暮らし方と遊び方」をどうぞ!

プロフィール
織田正昭先生
織田正昭福島学院大学福祉学部教授、博士(保健学)。長野県出身、東京大学医学部卒。元々は免疫微生物学やワクチンによる小児感染症の予防が専門であるが、現在は母子保健学、公衆衛生学、子ども環境学まで分野を広げて活躍されている。

 

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