運動好きな子どもは好奇心の塊、なるべく自由に遊ばせましょう

運動好きな子ども

大人と違って、子どもの遊び方にはいろいろ特長があります。自由にのびのびと遊ばせたいと木塚先生はおっしゃいます。

お母さんの役目は遊びたくなる場作り

― そもそも、運動が億劫な子の場合はどうやって遊ばせたら良いのでしょう?

勉強嫌いな子に「勉強しろ」と言っても、まず勉強しませんよね。これと同じで、運動嫌いな子に運動を強制しても、マイナスの効果になってしまいます。強制は禁物です!熱血タイプのお父さんが厳しく指導しすぎて、結局子どもがスポーツ嫌いになってしまうのが良い例ですね。ではどうすればいいのか?答えは、親が子どもを見守ってあげたり、一緒になって楽しむことです。特に、親が上手でなくてもいいんです。上手になった子どもを誉めてあげれば、子どもの自尊心や自分はできるという有能感もついていきます。そんな運動をしたくなる場や状況を作ってあげることが大切ですね。

子どもは好奇心の塊ですから、自由にさせることで、自ら考え、遊びを創出していきます。飛び跳ねる、蹴る、投げる、ボール遊び、ゲームへと・・・遊びを通していろんな動きを経験することで、体のさまざまなパーツが鍛えられ、結果的に体力・運動能力を高めることができるのです。事実、週に数回、運動指導を受けている幼稚園児とそうでない園児では、後者のほうが運動能力は高いとの研究結果も出ています(東京学芸大学名誉教授 杉原隆氏調査)。この差が出る理由のひとつに、待ち時間の問題があります。園児に運動指導する時はひとりひとり丁寧に教える必要があるので、結果的にひとりが指導を受けている間は他の子は待つしかないのでトータルの運動量が減ってしまうのです。それよりは、運動指導なしで好きに遊ばせた方が待ち時間もなく、運動量も充実するという結果になるのです。

運動好きな子ども
― お話を伺っていると、公園は子どもの可能性を伸ばすきっかけを秘めていそうですね。

「幼児期の認知機能は言語や想像ではなく、身体感覚によって育つ」。これは、スイスの心理学者ジャン・ピアジェの言葉です。私なりに解釈すると、子どもにとっての「わかる」とは、体で験(ため)して初めて「わかる」ということです。親があれこれ言い聞かせたとしても、実体験のない子どもにとっては理解できません。それよりも、実際に外に出て体験させることが効果的なのです。そうした観点からみれば、身近な公園はとても素晴らしい空間ですね。公園には不特定多数の子どもたちが遊んでいますから、他者とのコミュニケーションによって、まず社会性が身に付きます。鳥のさえずりや花のにおいなどから五感も刺激されますから、室内で過ごす以上の発見に出会えるでしょう。手軽に刺激が得られるテレビやゲーム、スマートフォンにもメリットがあるかもしれませんが、くれぐれもほどほどに。自ら動かなくても刺激が向こうからやって来る「画面」を見ているときと、自ら動き回って刺激を探し体験しているときでは、運動量の差が大きくなるのは明らかですよね。

また、昨今の子どもは危機回避能力が低下していると危惧されていますが、公園ならよじ登ったり、少し高い所からジャンプしたり、飛び越えたりと、体を使ったチャレンジができるので、そうした危機回避能力を身に付けるにも適した場所です。でも、もっと単純に、友達や親と遊べる楽しい遊具があるといったワクワク感、ドキドキ感が「明日もまた外で遊ぼう」という意欲につながり、結果的に「体を動かすのが楽しい!」といったポジティブな気持ちを強くさせるのだと思うのです。そういった意味で、公園は子どもの運動好きになるきっかけを与えてくれる場、と言っても過言ではありません。

― 今日はどうもありがとうございました。
運動好きな子ども

 

プロフィール
木塚朝博先生
木塚朝博筑波大学大学院体育科学研究科修了。博士(体育科学)。筑波大学学生部学生課文部技官(体育センター勤務)、工業技術院生命工学工業技術研究所研究員を経て、現在、筑波大学体育系教授。専門は、体育学、体力学。著書に『身体性コンピテンスと未来の子どもの育ち』(明石書店、共著)他多数

 

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