井の頭恩賜公園 ~ 公園は吉祥寺に新しい文化を生むチカラ

子どもの頃から井の頭公園で遊び、大人になってからは公園の歴史や文化にも触れてきた本田さんには、サブカルチャーの街・吉祥寺になぜ新しい独自のものが生まれるのか、井の頭公園との関係性を感じていらっしゃるようです。

自然のうるおいが井の頭公園のチカラ

− 映画「PARKS パークス」には井の頭公園の様々な場所が登場しますが、吉祥寺で生まれ育った本田さんにとってはどんな場所でしょうか?

子どもの頃から井の頭公園ではよく遊びました。本当に子どもの冒険心をそそられる場所でしたね。大人に怒られはしましたが、池で泳いだり、魚やエビガニを採ったり、かなり自由に遊んでいました。いろんな動物や鳥、昆虫も棲んでいたので、そうした観察もよくしました。まさに井の頭公園の自然の中で、公園の空気を吸って育ったといって良いでしょう。
※編集室注:井の頭恩賜公園の利用は、現在の利用規約をご確認の上、楽しく安全に遊んでください。

本田拓夫
− 大人になってから、気がついたことはありますか?

それは、井の頭公園の持っている歴史や文化といった財産ですね。例えば「お茶の水」はそのまま飲むことができるわき水ですが、そこでは昔から茶事を営む水がくまれていました。井の頭自然文化園も開園は1942年ですし、2016年に69才で亡くなった象のはな子を含め、文化的には大きな財産ですね。 井の頭公園の豊かな自然はいろんなものを育てて、人にうるおいを与えてくれます。それが井の頭公園のチカラだと思いますし、そうした自然や歴史的な財産がすぐ近くにあるということは、すべて人の暮らしにつながっていると思います。

公園は街の人々の暮らしとつながっている

− 公園と人の暮らしの「つながり」というと、具体的にはどういうことになるでしょうか?

日常生活でいうと、公園を通って朝は駅に向かい、夜は自宅に帰る方も多くいます。朝はすがすがしい空気がありますし、夜は仕事で疲れて帰ってきても気分がリフレッシュされることもあるでしょう。

映画PARKSパークス
− 映画の中でも井の頭公園の中を行き来するシーンがたくさんありましたね。

そうですね。また井の頭公園では文化イベントも数多く開催されています。それこそ地域の伝統芸能からアートマーケットのようなものまでバラエティに富んでいます。以前、N響の方がステージではなく、自然の中で演奏されたことがありました。それは自然の音と音楽が一体となったコンサートで、昔に行われた野点のようなお茶席をほうふつとさせ、現代と過去が通じるようなものがある気がしました。

映画PARKSパークス
− なるほど、それは自然豊かな井の頭公園ならではの体験ですね。

こうした豊かな自然がもたらしてくれるものを一番感じるのはお子さんだと思いますよ。私の子ども時代と違って、こうしてビルが立ち並ぶ街になって、遊び場がなくなり、家の中に閉じこもってテレビゲームをするようになると、それが子どもにとって良いのか悪いのか答えは出ませんけど、そういう環境で育つと創造性や文化性に欠けるのではないかと心配ですね。
自然に棲む小さな命たちとのふれあいが人に対する思いやりも生み出すと思いますし、それがあればこれから日本の社会を作り出していくクリエイティビティもさらに高まってくるのではないでしょうか。

吉祥寺から、新しいものが生まれる

− 20年くらい前から吉祥寺はサブカルチャーの街と言われていますが、それも井の頭公園が大きく関係しているとお考えですか?

そうですね、いろんなものを生み出すパワーがこの街にはありますが、その源は今までお話しした公園のチカラだと思います。
ただし、今の吉祥寺の街は、外見上は便利でコンパクトで楽しく買い物ができるように発展してきましたが、利便性と引き換えになくしているものがないかと心配です。例えば吉祥寺にしかないような伝統文化をクローズアップしていくことも大事だと思うのですが、意外とそういうものを他に面白いものがあるとかで、簡単に捨ててしまうような風潮がある気がします。

井の頭公園
− 確かにそれは心配です。受け継いできたものは大切にしたいですね。

そうなんですが、仮になくしてしまったとしても、それを想い出すことができる場が井の頭公園だと言ってもよいと思います。酒を飲んで語り合うのもいいですが、公園の太陽と緑の下で話をすると自然と歌が流れてくるのが公園だと思いますね。だから、井の頭公園の自然のうるおいと街の賑わいが融合した吉祥寺は、まだまだ他の街とは違うものが生まれる予感がします。
人間のすべては過去・現在・未来とつながっているはずですが、どうしても現在を中心に生きてしまうようなところがありますね。でも、映画の中では時間を自由に結び付けられるので、そのあたりは「PARKS パークス」でうまく伝えられたかなと思います。

映画PARKSパークス
公園情報
井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市御殿山1-18-31)
開園年月日:1917年5月1日
開園面積:428,389.99m2
樹木:約20,000本
主な植物:サクラ、ラクウショウ、ヒトツバダゴ、ヒノキ、イヌシデ、モミジ
井の頭池の外周:約1.5km
主な施設:野外ステージ、競技場、テニスコート、野球場、ボート場など詳しくはこちら